Introduction

口を大きく開こうとすると、顎を動かす筋肉が痛む、あるいは骨がきしむような音がするといった場合は、顎関節症になっているケースが少なくありません。
また、原因不明の頭痛や肩こり、耳鳴りといった症状についても顎関節症が原因となっている場合もあるのです。
顎関節は耳の穴のすぐ前にあるので、耳鳴りや頭痛などが起こったときは顎関節症を疑ってみるのもいいでしょう。
肩こりは、一般的に体のバランスが崩れたときに如実に表れる症状です。顎関節症も原因として十分考えられます。
いずれにしても、顎関節症は、口の中や顎の関節周りの組織の異常が原因になっています。顎の違和感があった場合は歯科医で診察を受けてください。
口腔外科のある歯科医院がおすすめです。また、事前に顎関節症について問い合わせてもるのもよいでしょう。

次のような症状がある場合は
受診をお勧めします

  • 口の開け閉めのときに顎が痛む
  • 口を開け閉めのときに耳の前のほうから音がする
  • 口が開きにくい
  • 口が閉じにくい

Feature

歯科医院に顎の調子が悪いと訪れる患者さんは少なくありません。初期症状としては、口を開けて動かそうとしたときに、こめかみや耳の前方で痛みを感じる人が多いのです。
頬のあたりに痛みを感じる人もいます。
同様に、口を開けると顎のあたりから“カックン”“ジャリジャリ”といったような音がでる場合もあります。これも顎関節症の症状と思って間違いないでしょう。
顎関節症が進むと、「口が開きにくい」あるいは「口が閉じにくい」といった症状が出るようになります。

音が出るだけで、何も影響が無い人、いわゆる無症状の人は3割程度いるとされています。その場合は経過観察ということで、違和感もなければ来院する必要はありません。しかし、音が大きくなっていく場合、さらに痛みなどを伴ってくると歯科医院で受診をしてください。

顎関節症の症状が進むと周囲の器官、頭、耳、首や肩などにも痛みが出てきます。反対にそれらの部位から痛みを生じたときに顎関節付近も痛くなることがあります。
そのため、周囲の痛みが治まると顎関節の症状も治まることもあります。

以上のように、顎関節を含めその周囲に痛みなどの症状が併発したとき、それらがどこに原因があるかは歯科医院や内科などで診断を受ける必要があります。

顎関節症は、一時的に痛みが出るといった症状が出ても自然に治癒する場合があります。しかし、症状が改善しない場合、口が開けにくく日常生活に支障が出る場合は速やかな受診が必要です。

症状は軽いけど口の開け閉めに違和感を感じる場合は、1週間程度様子を見るのもいいでしょう。症状の改善が見られなければ歯科医あるいは内科医などで受診をするようにしてください。

Reason

顎関節症というのは、一つの病気として一括りできるものではありません。顎関節だけではなく、その周辺の部位にも障害や変形をもたらす病気の総称です。
障害が起きる場所によって以下の4つの型に分けることができます。

  1. 1.筋肉の障害
  2. 2.関節周辺の部位の障害
  3. 3.関節円板の障害
  4. 4.関節の骨の変形

以上の通りですが、中でも3番目の関節円板の障害が多く見受けられます。
関節円板というのは、上顎の骨と下顎の骨の間にあるクッションのような組織のことです。ちょうど、膝関節の継ぎ目にある軟骨と同様の働きをする組織と考えていいでしょう。

関節円板が通常あるべき位置からずれてしまうことがあります。関節のつなぎ目ですから、位置がずれてしまうと、関節の動きが制限され、痛みや炎症を発症することがあります。

どうして、このような障害が発症するのでしょうか。

これは、様々な要因が重なり合って発症するものなので一概に一言で言うことはできません。一般的に、顎関節や周辺の部位に大きな負荷を与え続けることによって発症するとされています。

大きな負荷の要因としては
次のようなものがあります。

かみ合わせ不良

かみ合わせが悪いと、当然ですが咀嚼がうまくできません。また、顎や首といった筋肉に過度な負荷をかけてしまいます。
筋肉に負荷がかかると筋肉痛が起こるように、かみ合わせが悪いと顎間接の痛みだけではなく、肩や首にも“こり”などの症状が現われます。
かみ合わせ不良は、歯科治療後に起こる場合も少なくなく、治療後の経過観察も重要になってきます。

歯ぎしり・食いしばり

身体的・精神的なストレスによって、歯ぎしりや食いしばりが起こることがよく知られています。特に精神的なストレスが溜まると、口の中に出やすいのが舌痛症です。顎関節症はその次に症状として認められることが報告されています。

TCH(歯列接触癖)

人は安静な状態はもちろんですが、普通の状態でも上下の歯は基本的に接触しません。自分自身を考えてみても、極端に歯を食いしばるときは特別な状況のときだと思います。

一方で、普通のときでも上下の歯を接触させている人もいます。これがTCHです。
口を閉じるときに筋肉を使うので、そのときは顎関節やその周囲にも常に緊張を与えてしまいます。結果的にその緊張が顎関節症を発症させる原因となってしまいます。

その他の癖

その他にも日々の生活習慣の中で顎関節症の原因となる癖がいくつかあります。

  • ・片側だけで咀嚼
  • ・ほおづえをつく
  • ・うつぶせ寝
  • ・顎に電話を挟む

一見、なんでもないように思えますが、これらを継続することが顎のバランスが崩れてしまうことがあります。特に片側だけで咀嚼するのではなく、まんべんなく両側の歯を使って咀嚼するようにしましょう。

Treatment

顎関節症の治療法には以下のものがあります。

運動療法

口を開ける閉めるといった練習を繰り返すことで、顎関節症を緩和します。

薬物療法

顎などの痛みが強い場合は、消炎鎮痛薬などを服用して痛みを緩和させます。

スプリント療法

顎関節症の治療にスプリントという装置(マウスピース)を使います。これは歯を覆って顎の関節を本来の位置に移動させるための装置です。
かみ合わせを安定させる効果があり、さらに歯ぎしりや食いしばりによって起こる顎の筋肉の負担を軽減します。

理学療法

慢性的な痛みに対しては、患部を温めるなどの理学療法を行って痛みを緩和します。